アロハオエの調べにのせて
埼玉栄高等学校吹奏楽部「環太平洋音楽祭」公演
レポート(2002.3.24〜4.1)。
<アラモアナでのコンサート>
大観衆の喝采を浴びて、アンコール曲「Magic Slides」
が始まります。トロンボーン・パートをフィーチャーす
る軽快な調べに、アラモアナ・ショッピングセンターに
集まったお客さんの気分はさらに高揚。2曲目のアンコ
ール曲「アロハオエ」で興奮を冷まし、心地よい余韻を
楽しんでいただきます・・・。
<埼玉栄高等学校吹奏楽部>
埼玉栄高校といえば、吹奏楽の世界では知らぬ人のない
名門中の名門。大滝実、奥章両先生率いる吹奏楽部80名
に、今回はOBの宍倉晃氏も指揮者として参加です。
同楽団は昨年1月にフロリダ公演を行ない、今回は2年連
続の海外遠征。7泊9日の行程でハワイに滞在し、「環太
平洋音楽祭(主催:米国ワールド・プロジェクト・コー
ポレーション)」のプログラムを体験します。
ホノルル到着翌日(3月25日)、アラモアナ・ショッピ
ングセンターのステージで、さっそく演奏を披露。以下
の曲に加えて、上記のアンコール2曲を演奏しました。
1.Ceremonial March 2.Omens of Love
3.Samba Bear 4.Disney Medley
5.Amazing Grace 6.美女と野獣
7.宝島
<環太平洋音楽祭とは>
1986年に産声をあげた「環太平洋音楽祭 Pacific Basin
Music Festival」は、今回で17回を数えます。これまで
に、日本からも数多くのバンドが参加。
秋田花輪高等学校 1986
埼玉春日部共栄高等学校 1988 1990 1995 1998
石川県高等学校選抜吹奏楽団 1992 2001
京都洛南高等学校 1993 1995
全日本高等学校選抜吹奏楽団 1994
埼玉伊奈学園総合高等学校 2000
ほかにゲストバンドとして、明治大学ビッグ・サウンズ・
ソサェティ・オーケストラ(1990)、国際基督教大学モ
ダン・ミュージック・ソサェティ(1991、1999)、立
教大学ニュー・スインギン・ハード(1993)などが出演。
ご覧いただいて分かるように、何度も繰り返し参加され
る楽団の多いことが、この音楽祭の特徴です。
<教育的プログラム>
当音楽祭の創立者 Robert Lutt は、バークレー高校でバ
ンドディレクターを勤めるかたわら、サンフランシスコ郊
外「カザデロの森」でミュージック・キャンプを主宰す
るなど、長年、音楽教育に携わってきました。
環太平洋音楽祭においても、Robert Lutt は、音楽を通じ
た国際交流を中心に据えて、教育的プログラムをふんだ
んに盛り込むことにしました。以下にその内容をご案内
しましょう。
<演奏会>
1.フェスティバル演奏会
各国からの参加楽団が腕を競う「フェスティバル演奏
会」は行程4日目の3月27日、パシフィック・ビーチ・
ホテルのグランドボールルームで開催されました。
審査員は3名。ハワイ大学で教鞭をとるGrant Okamura
氏、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校教授の
Glenn Price博士、そして浜松市音楽文化名誉顧問の
秋山紀夫氏です。
埼玉栄高校は、"Ceremonial March"、"Inchon"、"Arie
Der Lauretta, O Mio Babbino Caro from Gianni
Schicchi" "瑜伽行中観吾妻鏡異聞" の4曲を演奏。最
優秀バンドに選出されました。
2.アンコール演奏会
行程6日目の3月29日は「コマンド・パフォーマンス」
と呼ばれるアンコール演奏会です。フェスティバル演
奏会で最優秀に選ばれた吹奏楽団と合唱団、「フェス
ティバル・セレクトバンド(後述)」、全合唱団によ
る合同歌唱「マスコーラス」の4グループが演奏を披
露します。
会場は「ハワイ・シアター」。クラシカルな装飾が施
された、素敵なホールです。ここで埼玉栄高校は、ア
ンコール演奏として"Inchon"、"Magic Slides"、"Omens
of Love"という硬軟取り混ぜた曲を披露。高度な音楽
性、そしてエンタテイメントあふれる楽しい演奏に、
会場は総立ち。歓声と拍手につつまれました。
3.アラモアナ演奏会
先述の通り、行程2日目の3月25日昼、アラモアナで埼
玉栄高校は演奏会を行ないました。ステージを取り巻
く多くの買物客から、ここでも大きな拍手をいただき
ました。
<楽器指導とバンド指導>
1.ワークショップ
外国人講師によるバンド指導です。埼玉栄は、Grant
Okamura氏とGlenn Price博士の両名から、各1時間の
指導を受けました。
2.クリニック
楽器別の講習会です。ハワイ・シンフォニーの楽団員
を中心とした講師陣が、各楽器の奏法指導を行ないま
す。参加各バンドの同じ楽器の者同士が集まるので、
ここではより親密な交流機会が生まれます。しかも、
クリニックは音楽祭の後半に開催するため、それまで
に顔見知りになった仲間たちもいて、話しかけやすい
雰囲気が生まれています。
<多重的な国際交流>
「環太平洋音楽祭」の一番の特徴は、その多重的な国際
交流プログラムにあります。
1.フェスティバル・セレクトバンド
参加各バンドから10名程度を選出し、セレクトバンド
を編成。現地で4日間の練習を行います。今年の指導
者は、Glenn Price博士で、"Suite in E-Flat (Gustav
Holst)"、"Courtly Airs and Dances (Ron Nelson)"を
練習、「コマンド・パフォーマンス」で成果を披露し
ました。フェスティバル・セレクトバンドに参加した
メンバーは、非常に密度の濃い国際交流を体験するこ
とができます。
2.ウェルカム・ディナー/ダンスパーティー
行程2日目の夜に行なわれる夕食会です。各グループ
のメンバーがバラバラになって知らない者同士で着席
するため、新しい友達を作る絶好の機会となります。
夕食に引き続いてディスコ・ダンスとなります。ここ
で一気に打ち解けることができます。
3.合同練習会
外国のグループとの合同練習です。お互いの譜面を、
両バンドの指揮者が交互に指揮することで、交流を深
めます。着席も、両バンドのメンバーが一人置きに座
ります。埼玉栄はカリフォルニアのNorthgate High
School、Mountain View High School の2楽団と合同
練習を行ないました。
4.フェスティバル・ルアウ
ヤシの木、ポリネシア舞踊の妖しいリズム、降り注ぐ
陽光。南国ムード満点のハワイ大学・野外円形競技場
で行なわれるフェスティバル・ルアウは、音楽祭全体
のフィナーレを飾る野外パーティーです。
参加者全員で写真を撮り、住所やTシャツを交換し、
ともに過ごした1週間の楽しさを確かめ合います。
「フラダンス・コンテスト」では、お手本となるダン
サーの見様見まねで、激しく腰を振り、優雅に手を動
かし、会場は一気に笑いに包まれます。
<音楽を使いこなすために>
「音楽は国際語」とはよく言われることです。けれども、
本当にそれを国際語として使いこなすためには、ちょっ
としたお膳立てが必要になります。
「環太平洋音楽祭」が用意している各種のプログラムは、
音楽が国際語として最大限機能するように、工夫と改良
を重ねてきたものです。南国の開放的な空気も、友好気
分をさらに盛り上げてくれます。
「国際交流」をキーワードとしたこの音楽祭は、合奏音
楽の持つ可能性をどこまで引き出せるか、今後も、参加
者とともに、実験を重ねていくことでしょう。
楽しい思い出とアロハオエの調べを胸に、埼玉栄高等学
校吹奏楽部はハワイを後にしました。
マハロ!
ワールド・プロジェクト・ジャパン 黒坂洋介
投稿者 kurosaka : 2004年3月15日