Jazz at IKSPIARI 2001レポート
2001年8月31日, 9月1日, 9月2日に、舞浜のディズ
ニーリゾートで行なわれたジャズ・イベントのレポ
ート。
■出演者
DAY 1: 五十嵐一生カルテット
DAY 2: 大野雄二トリオ+1 special guest akiko
DAY 3: クリヤ・マコト・プロジェクト
【DAY 1: 五十嵐一生カルテット】
<Jazz at IKSPIARI とは>
舞浜の東京ディズニーランド、ディズニーシーに隣接す
る、夢いっぱいのショッピングモール、それがイクスピ
アリ。南仏の田舎町をイメージした路地や、大胆なデザ
インのショップが並ぶ、異国情緒あふれる商業施設です。
モール内に設けられた広場 - セレブレーションプラザと
いいますが - このイベントスペースで行われるジャズ・
コンサートが、Jazz at IKSPIARIです。主催J-WAVE、
特別協賛UCC上島珈琲株式会社のもと、JJazz.Netがプ
ロデュース。今日から3日間にわたってジャズ・アーティ
ストの生演奏が繰り広げられます。
<舞浜 - 雨のちくもり>
関東地方は、朝から、雨。午前中のセッティングは、雨
よけのテント組み立てから始まりました。ピアノを搬入
し、調律を済ませ、アーティストによるサウンドチェッ
クです。幸い、この頃には、雨はあがり、薄曇りとなり
ました。
Jazz at IKSPIARI 初日の出演者は、五十嵐一生(tp)
カルテット。俵山昌之(b)、市川秀男(pf)、井上功
一(ds)というパワフルなトリオをバックに、五十嵐の
トランペットが鳴り響きます。
<ラジオ番組風コンサート>
ステージ横にサテライトスタジオを設け、トシ中田、リ
サ中村というJJazz.Netでお馴染みのDJが、幕間にトー
クを披露。会場は、ラジオ番組の生放送といった雰囲気
になります。
五十嵐一生カルテットは、12:30からの第1セットで、以
下の4曲を演奏しました。
1. Stella by Starlight
2. In A Sentimental Mood
3. Cantaroupe Island
4. Cotton Tail
あるときは切り裂くように、またあるときはむせび泣く
ように、曲調によって五十嵐のサウンドはいろんな表情
を見せます。
14:00からの第2セットでは、 1. Corcobado、2. Straight
No Chaser、3. Lamentを演奏。聴衆は足を止めて熱心に
聞き入っていました。
演奏終了後、CD即売と同時に、五十嵐一生サイン会を開
催。今日の演奏に魅せられたお客さんたちの、長い列が
できました。
<ある試み>
このイベントは、いろんな意味で新しい試みを含んでい
ます。ひとつは、イクスピアリのような大規模商業施設
において、無料でジャズの演奏会を開催することで、従
来とは異なったリスナー開拓の道を探ることです。
第二には、インターネット、携帯電話、ショップ、FMラ
ジオなどの各種メディアとイベントとを複合的に組み合
わせることで、新しいリスナーへのアプローチを模索す
ること。いずれは雑誌や全国各地のライブハウス、ある
いはJJazz.Netが従来から行ってきた東京駅 BREAK での
ライブ活動との連携も視野に入れています。
第三は、ディズニーリゾートとジャズとを組み合わせる
ことによって、新しいリスニング・スタイルを提案する
こと。今後はアマチュアバンドにも積極的に出演のチャ
ンスを解放し、一般の人にとってジャズがより身近な音
楽と感じられるような工夫を重ねる予定です。
【DAY 2: 大野雄二トリオ+1 special guest akiko】
<Jazz at IKSPIARI 2日目>
東京ディズニーリゾートに隣接する「イクスピアリ」。
この華やかな異次元タウンを舞台にジャズライブを繰り
広げるのが、Jazz at IKSPIARI です。
昨日の五十嵐一生カルテットに引き続き、今日は大野雄
二トリオ+1。スペシャルゲストとして、注目のヴォー
カリスト akiko が登場します。
昨日は、12:30と14:00という早い時間帯で2セットでした
が、今日は3セット。しかも、16:00、17:30、19:30と夕
方から夜にかけての時間帯です。
<ルパン・ルパン・ルパン>
大野雄二といえば、「ルパン三世のテーマ」の作曲者と
してあまりにも有名ですが、最近は、自らのルーツであ
るジャズピアノに戻って活動。自称「新人ピアニスト」
なんだそうです。
それにしても、やはり、ルパンの人気は圧倒的。聴衆は
ステージに詰めかけ、大野独特の洒落たジャズ世界に魅
了されていました。
大野雄二(pf)、鈴木良雄(b)、村田憲一郎(ds)と
いう安定感あるトリオに、若くて躍動感なパーカッショ
ン仙道さおりが加わります。そして、スペシャルゲスト
のakiko。
akiko は、今年、各社争奪戦の末、ユニバーサル・ジャ
ズと契約した注目のシンガー。アンリ・ルノーの手でプ
ロデュースされた「ガール・トーク」というアルバムで
6月にデビューしました。
その甘く、まとわりつくような歌声は、大野の描くルパ
ンの世界にぴったり。akiko自身の存在感も抜群で、聴
衆の心をステージにぐっと引き付けていました。
<魅力的なプログラム>
各セットの曲目は以下の通り。スタンダードあり、ルパ
ンあり、ビートルズあり、ディズニーありと、聴衆を飽
きさせない絶妙のレパートリーが並んでいます。
第1セット
C Jam Blues
ルパン三世愛のテーマ
(以下akikoと共演)
Fly Me to the Moon
Girl Talk
ルパン三世2001エンディングテーマ What's the Worry
第2セット
銭形ロック
And I Love Her
(以下akikoと共演)
You're the Sunshine
Crazy He Calls Me
ルパン三世2001オープニングテーマ
第3セット
Love for Sale
Love Squall
(以下akikoと共演)
ルパン三世2000
星に願いを
Route 66
<恋人たちのジャズ・ナイト>
夜のイクスピアリには、ジャズが似合う。これは、ずっ
と以前から、jjazz.net で考えてきたことです。実際に
やってみたら、これが予想以上。会場にはカップル客も
多く、手をつなぎ、肩を抱き、kissをくり返す人たちも
いました。
高い年齢層のお客さんも多く、大人の時間を楽しむ方が
多く見られました。また、小さな子供たちも、騒ぐこと
なく、じっと演奏に聞き入っていたのが印象的でした。
<DJは今日も活躍>
Jazz at IKSPIARI といえば、リサ中村&トシ中田によ
るDJを忘れてはなりません。セットとセットの間に、CD
をかけながら、テンポのいいトークを聞かせます。会場
には、「ジャズの実況中継」とでもいうべき、独特の臨
場感が生まれます。
【DAY 3: クリヤ・マコト・プロジェクト】
<リズムが牙をむく>
ルパン三世のテーマが、イクスピアリに鳴り響く。大野
雄二ではありません。クリヤ・マコト・プロジェクトの
演奏です。納浩一の挑発的なベースに、うねるような松
山修のドラムがからみつく。
クリヤ・マコトのピアノは、黒人アスリートを思わせる
「バネのきいた」タッチで納と松山の死闘に割り込み、
アーシーな太田剣のサックスも、負けじとバトルに参入。
昨日、この同じステージで大野雄二グループが演奏した
お洒落な演奏と違って、クリヤ・マコト・プロジェクト
のルパンは、凶暴かつスリリング。リズムが牙をむく、
とでもいえそうな、衝撃のパフォーマンスです。
クリヤはチャック・マンジョーネ・バンドのメンバーと
してミュージシャンのキャリアをスタートした国際派。
帰国後は、「新世紀エヴァンゲリオン」のエンディング
テーマをきっかけとして、アニメ曲のジャズアレンジや、
売れっ子シンガー平井堅への楽曲提供など、ユニークな
分野で活躍しています。
今日のレパートリーも、親しみやすい曲に高度なジャズ・
アレンジをほどこした、クリヤ独特の世界です。
* 銀河鉄道999のテーマ
* 11PMのテーマ
* MISSION IMPOSSIBLE のテーマ
* 傷だらけの天使のテーマ
* ルパン三世のテーマ
近日発売のクリヤのアルバム「TV JAZZ ANTHOLOGY」
も、このような曲がたくさん収められる予定。日本発の
ジャズ・スタンダード・ナンバーを生み出そうという、
意欲的な試みです。
<DJがジャズムードを盛り上げる>
リサ中村&トシ中田の名コンビは、今日もDJで大活躍。
セット間のインターバルに、センスのよいトークと音楽
で、会場の雰囲気作りをリードします。
このサテライト・ステーションもまた、新しい司会進行
の手法として、注目してよいでしょう。JJazz.Netでは、
このシステムをパッケージ化して、全国各地のジャズ・
イベントに対して販売することを計画中です。JJazz.Net
のサテライト・スタジオが、あなたの町のジャズフェス
にも出張いたします!
<ジャズの新しいかたち - Jazz at IKSPIARI>
東京ディズニーリゾートに立地するイクスピアリは、架
空の歴史に基づく夢の街。ファンタジーあふれるこの会
場で、3日間にわたってジャズの生演奏をお送りしてき
たのが、Jazz at IKSPIARI です。
主催:J-WAVE 81.3FM
特別協賛:UCC上島珈琲株式会社
企画制作:JJazz.Net
出演:五十嵐一生(DAY1 8/31)
大野雄二(DAY2 9/1)
クリヤ・マコト(DAY3 9/2)
ショッピングモールで、本格的な "無料" ジャズライブ
を提供する - JJazz.Netとイクスピアリによるこの試み
から、新しい時代のジャズとのつきあい方が見えてきま
した。
ジャズの生演奏は、静かに座して聴くだけではなく、ビ
ールやアイスクリームを片手にながめたり、ぶらぶら歩
きしながら聞き流したり、恋を語るBGMとしたりするこ
とで、私たちの生活を豊かにする小道具となりうる。そ
ういう認識を、この3日間で、多くの方と共有できたよ
うな気がします。
日本の春には、「花見」という麗しい行楽があります。
花見は、桜を見に行くのでありながら、実際には、桜は
あまりながめない。むしろ、満開の桜が咲き乱れる「場」
の雰囲気を愛でるのだといってよいでしょう。
ジャズも同じだと思います。生演奏が鳴り渡る「場」の
空気を楽しむ。いわば「ジャズ見」ですね。名花を珍重
するのではなく、なんとなく花のエネルギーをもらう -
そういう花見のようなやり方で、ジャズを気軽に楽しむ
機会を、どんどんと提供していきたいものです。
ワールド・プロジェクト・ジャパン 黒坂洋介
投稿者 kurosaka : 2004年3月15日