ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


アンサンブル・クリーニング

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〜アーティキュレーションで息をあわせる〜


※バンドジャーナル2008年6月号に掲載されました。
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<タングマジック・オーケストラ練習会>
2008年3月21日(金)午後8時〜10時、東京江東区の
ティアラこうとう第5練習室で、タングマジック・
オーケストラ(TMO)第1回練習が開催されました。

出席者はトランペット9名、トロンボーン3名、ホル
ン1名の合計13名。全員がナチュラル・ブラス・ス
タディ(NBS=通称タングマジック)講習会の受講
経験者です。
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NBSは「自然な金管奏法の研究」という名前通り、
身体の使い方から奏法を見直す金管クリニックで、
タング(舌)とエア(呼吸)を重視する独特のエク
ササイズ体系です。

講習会で学んだ「タングとエアのコントロール法」
を、実際に楽曲練習へ生かそうという趣旨で結成さ
れた楽団がこのTMO。指導するのはタングマジック
講師の杉山正氏です。

第1回練習のためにはるばる新潟からかけつけてく
ださった参加者もあり、初回から熱気に満ちたもの
となりました。練習した曲目は、

1.I've Never Been in Love Before
 Com. Frank Loesser
 Arr. Lennie Niehaus
2.On the Street Where You Live
 Com.Lerner & Loewe
 Arr. Lennie Niehaus
3.Pennies from Heaven
 Com. Arthur Johnston and Johnny Burke
 Arr. Lennie Niehaus

の3曲。スタン・ケントン・オーケストラ用の譜面
を使い、サックスパートをホルンに置き換えて演奏
します。


<アーティキュレーションの洗練>
この練習会では、タングマジック理論に基づき、
アーティキュレーション(※)の洗練によって合奏
をまとめることがテーマになっています。

 ※アーティキュレーション(Wikipediaを要約)
  音楽の演奏技法において、音の形を整え、音や
  音のつながりに強弱や表情をつけて旋律を区分
  すること。

一般に合奏練習でのアーティキュレーションという
と、スラーやスタッカート、アクセントなどの記号
の付け方や解釈のことを意味します。

タングマジックではタングとエアがトレーニングの
中心ですので、アーティキュレーションこそがアン
サンブルを決めるメインの要素と考えて、そこに重
点を置いた練習をします。文字どおり「息をあわせ
る」わけです。


<基本は相対シラブル>
まず「図1」をご覧ください。このような譜面を演奏
するとき、頭の中ではどのように考えますか?

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(図1)

「ソドソド」「トゥトゥトゥトゥ」「タタタタ」な
どいろんな歌い方があるでしょう。タングマジック
ではこれをどう歌うのか、正解を述べる前に、順を
追って説明しましょう。

もっとも基本となるのは相対シラブルです。相対的
に低い音は「ア」、相対的に高い音には「イ」とい
う音(シラブル)を与え、そのように頭で歌いなが
ら演奏します。

したがって「図2」のような場合は、「ア→イ」と歌
います。これによって舌のポジションが確実に「低
→高」となりエアの流れを速くするのです。

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(図2)

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(図3)

図3(教則本「ハイ・エア・ビルド〜音域5オクター
ブの開発〜」から転載)をご覧ください。「ア→
イ」と発音することによって、舌の位置が変化する
ことがわかります。

もし図2のフレーズをユニゾンで演奏するとき、ひと
つの楽団の中に「ア→イ」と歌う人のほかに「ド→
ソ」と歌う人や「トゥ→トゥ」と歌う人が混ざっ
ている場合、それぞれ舌のポジションや動きが異な
ることになります。

このように舌の運動が各自バラバラであることは、
音程、音量、音色のすべてにおいて、アンサンブル
をまとめるためのリスク要因となります。


<タンギングとシラブルの組みあわせ>
もう一度図2をご覧ください。この譜面にある2つの
音符にはスラーがついています。最初のドは吹き始
めですから舌をつきますが、次のソはタンギングし
ません。つまりタンギング「あり→なし」と吹くこ
とになります。

では、タンギングとシラブルをあわせたとき、図2
はどのように歌うべきでしょうか。答えは「タ→
イ」です。ここでの相対的低音ドはタンギングをす
るので「タ」、相対的高音ソはタンギングをしない
ので「イ」となるのです。

さて、いよいよ図1をどう歌うかについてです。こ
のメロディを図4のように前半と後半二つに分け、
まずAの部分だけに注目してください。

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(図4)

ここでは相対的高音がソ、低音がド。どちらの音符
もタンギングしますから「ティ→タ」と歌います。

つぎにBの部分は、相対的低音がソ、高音がドで、
やはりタンギングしますので「タ→ティ」となりま
す。そしてAとBを続けて歌うと「ティ→タ→タ→
ティ」。これが図1の歌い方なのです。

この歌い方を楽団内の金管全員で共有すれば、比較
的短い時間で音程、音量、音色がそろい始めます。

これがタングを使った合奏練習の基本です。サウン
ドがどんどん澄んでくるので「アンサンブル・ク
リーニング」と呼んでいます。


<スラーのついたフレーズ>
では、図5のようにスラーがついたフレーズの場合
はどうなるでしょうか?

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(図5)

最初の音ソはタンギングします。第2音ドはしませ
ん、第3〜4音はどちらもタンギングします。ですか
らこれは「ティ→ア→タ→ティ」と歌います。

ここまでは原則通りですけれども、次のような位置
にスラーがつくと、少し事情が変わってきます。

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(図6)

原則通りに歌うと「ティ→タ→ア→ティ」となりま
す。これでうまく演奏できればそれでも構いません
が、第3音ソが吹きにくい場合が出てきます。第2音
から第3音がスラーで高い音へ向かうので、息のス
ピードを上げるサポートが必要だからです。

この第2音→第3音の「タ→ア」を、エアのパワーを
アップするだけで乗り越えられない場合は、補助シ
ラブルの「エ」を使い、「ティ→タ→エ→ティ」と
歌います。

タングとエアの関係はかなり複雑ですので、歌い方
はフレーズごとに対応する必要があります。ここで
は基本中の基本についてのみ説明しました。


<あらゆる組み合わせを練習>
アンサンブル・クリーニングの中心となるのは、こ
の「シラブル/タンギング/スラー」のありとあら
ゆる組みあわせを練習することです。

シングルタンギング、Kタンギング、ダブルタンギ
ング、スラーとタンギングの複合など、ひとつのフ
レーズに対して十種あまりのパターンで練習するこ
とで、まずは個々人のアーティキュレーションを洗
練していきます。

そのようにしてタングとエアのコントロール能力を
高めつつ、合奏においては、みなが同じ歌い方をす
ることでアーティキュレーションをそろえます。

この方法は、トランペット、フレンチホルン、トロ
ンボーン、ユーフォニアム、テューバ、フリューゲ
ルホルン、コルネット、ビューグルなどあらゆる金
管楽器に効果があります。

また、管弦楽、吹奏楽、マーチング、ジャズ、ラテ
ン、ロック、ポップなどジャンルを問わず応用する
ことができます。

さらに少しくふうを加えれば、木管楽器、弦楽器、
打楽器とも効果を共有することが可能です。

よいアンサンブルの前提となるのは、文字通り「息
があった」演奏。TMOの練習では、アンサンブル・ク
リーニングの手法を徹底することで、短期間のうち
に「息をあわせ」、美しいサウンドを作り上げるこ
とをめざしています。

近い将来、また成果をご報告しましょう。

(タングマジック代表 黒坂洋介)




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投稿者 kurosaka : 2008年6月23日