ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


プラーナについての考察

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 呼吸を変えれば音楽は変わる!


【インデクス】
0.はじめに
1.境体というグレーゾーン
2.境体のバリエーション
3.まずはSOシフトから
4.立つだけでヨーガになる
5.呼吸におけるSOシフト
6.第一段階は意主体従
7.第二段階は体主意従
8.第三段階は意主気従
9.第四段階は気主意従
10.第五段階は気主気従
11.実践的には第二段階までで十分
12.キーポイントはSOシフト
13.ヨーギがなにかすればそれはヨーガになる
14.見えるプラーナと見えないプラーナ
15.なにをプラーナと呼んでいるか
16.プラーナが根本構成要素なら
17.境体を想定することで
18.私もまたプラーナ
19.水と氷にたとえると
20.呼吸はプラーナ交換
21.循環するプラーナ
22.重力境体を実感する
23.軸上のポイント
24.リラックスは境体への入口
25.練習体系における呼吸法の位置づけ
26.やはり鍵を握るのはSOシフト
27.月をさす指
28.上級になるほど見た目の動きが減る
29.意識としての腹圧
30.境体としてのプラーナが出入りする
31.極端に浅い呼吸で試してみる
32.プラーナはエネルギー+情報か
33.メディアとコンテンツ
34.プラーナの本質は情報
35.プラーナーヤーマは情報制御の技法
36.本質へ働きかけるために
37.非言語コミュニケーション

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呼吸を変えれば音楽は変わる!
著:黒坂洋介
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0.はじめに

ヨーガでは呼吸法をプラーナーヤーマといいます。
「プラーナ」をコントロールする技法ということ。
気功ではプラーナに相当する概念に「気」があり
ます。

ヨーガでいう「プラーナ」、気功でいう「気」につ
いては、指導者や実践者によってさまざまなニュア
ンスの説明がなされます。そもそもプラーナと気は
違うものであるという解釈もありますし。

 「プラーナとはなにか」

という問いを立ててしまうと、納得のいく回答を得
るのはなかなか難しいかもしれません。

そこでこの考察では、以下のように多角的な問いか
けをすることで、プラーナがどんなものか浮き彫り
にできないか挑戦してみたいと思います。

1.わたしのプラーナの感じ方
2.わたしのプラーナ導入法
3.わたしのプラーナ開発法
4.わたしのプラーナ操作法
5.わたしのプラーナ交換法
6.わたしのプラーナの定義

つまりプラーナというものを個人的な体験の中に位
置づける試みです。

ヨーガ指導者はもちろん、ベテランから初心者にい
たるヨーギ/ヨギーニ、さらに座禅、瞑想、気功、
その他ボディワーク実践者にとって、

 「わたしはプラーナや気(あるいはそれに相当す
 るもの)とこんな感じでつきあっています」

というプライベートな観点からお読みいただければ
と存じます。なお、コメントや質問等ある場合は、
メールで筆者(黒坂)宛にご連絡くださいませ。

では、はじまり、はじまり。
2010.12.8


***





1.境体というグレーゾーン

わたしは身体と意識の中間層には、身体・意識のど
ちらにも属さない、あるいは両方に属しているとも
いえる「グレーゾーン」が存在すると考えます。そ
してそのグレーゾーンに「境体(きょうたい)」と
いう名前をつけました。

身体と密接な関係があるけれども身体そのものでは
なく、意識の一種でありながら単なる空想やイメー
ジでもない。たしかな存在感があるけれども物質と
しての実体はない。いわば「情報としての身体」を
境体と呼ぶわけです。

そして境体にはいくつもの「態」がある。より固体
に近い態から流体に近い態まで。それも時々刻々と
ようすの変わる動的なプロセスとしての態です。つ
まり身体と意識の中間層にある境体は、状況に応じ
てさまざまな「態」をとるわけです。

その態が液体、気体、あるいは光のように感じられ
る場合を、プラーナもしくは気と呼んだのではない
かという仮説を思い描いています。

それ(プラーナ)は人体に活力をもたらしたり、病
気を治したり、あるいは武術的な攻撃力を持ったり
する「エネルギー」としてのふるまいをします。

同時に視覚・聴覚や体性感覚に影響を与えたり、遠
隔地とのコミュニケーションを可能にしたりといっ
た「情報」としての機能もあわせ持ちます。

2010.12.8
(つづく)


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***





2.境体のバリエーション

境体の態が固体に近い状態に感じられる場合は、
「アストラル体」「チャクラ」「ナーディ」の
ように表現されると推察できます。

それが流体的な態の場合「プラーナ」「シャクティ」
「クンダリニー」などと表現される。

それらはすべて「情報としての身体」たる境体のバリ
エーションであるという仮説です。


***





3.まずはSOシフトから

このような仮説を前提とした場合、具体的にプラーナ
とどう付き合うか、呼吸法(プラーナーヤーマ)には
どのように取り組めばよいのか。それについて考えて
みましょう。

まず最初に確認しておきたい概念はSOシフトです。
「えすおーしふと」と読みます。S(subject=主体)
とO(object=客体)が入れ代わる(シフトする)現
象のことをいいます。

たとえば背骨を左右に動かす動作をするとき「私が背
骨を動かす」と感じる状態から「背骨が私を動かす」
と感じるような変化が生じます。この主客転倒をSO
シフトと呼びます。

アーサナのSOシフト、瞑想のSOシフト、そして呼
吸のSOシフトなど、さまざまな場面で起こります。

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4.立つだけでヨーガになる

アーサナにおいて、SOシフトを考えてみましょう。
もっとも単純な姿勢のひとつに「直立する」がありま
す。ただまっすぐに立つということです。

これも「自分が(ふんばって)立つ」という状態から
主客転倒し、「地球に立たせてもらっている」と感じ
られるような「受動的な立位」があり得ます。

全身から可能な限り力を抜いて、立つことに必要な筋
力だけを使って立ったとき、このような「立ちのSO
シフト」がおとずれます。

そのとき、立つことはそれだけでヨーガになると考え
ることができます。


***





5.呼吸におけるSOシフト

プラーナーヤーマ(呼吸法)についてのSOシフト
を考えます。主客が転倒するということは、「私が」
能動的に呼吸するのではなく、受動的な状態になる
必要があるわけです。

たとえば「地球が」呼吸していて、それに私の呼吸
が連動しているような状態。これを「地球呼吸」と
呼んでもいいでしょう。

具体的には、自分が息を吸うときに「吐く」と感じ、
吐くときに「吸う」と感じます。つまり呼吸してい
る主体は地球であって、地球が吐くからプラーナが
私に吹き込まれる(つまり私は吸気の状態)、地球
が吸うからプラーナが私から吸い出される(同じく
呼気の状態)となるわけです。

このようなSOシフト呼吸法ができるようになると、
ヨーガの内容がぐっと深まるのを感じます。


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6.第一段階は意主体従

さてここからは五段階に分けて、プラーナとの付き
合い方を考察してみたいと思います。

まず第一段階は「意主体従(いしゅたいじゅう)」。
文字通り、意識が主で、身体が従、という状態です。

呼吸法(プラーナーヤーマ)で考えるなら、「私が
息を吸おう」として空気が入ってきて、「吐こう」
として空気が出る状態です。つまりふつうの意識的
呼吸がこれにあたります。

ここからSOシフトが起きると第二段階へ進みます。

******





7.第二段階は体主意従

第二段階は「体主意従(たいしゅいじゅう)」です。
体が先に動き、それに意識がついていく。

呼吸法(プラーナーヤーマ)の場合は、「私が呼吸
する」という意識が薄れ、私は呼吸させられるとい
うような受動的状態になります。
5.呼吸におけるSOシフト参照

つまり、息を吐くという身体現象が起きてからそれ
を意識が追認し、息が入ってくる現象を意識が後か
ら確認するような状態です。


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8.第三段階は意主気従

第三段階は「意主気従(いしゅきじゅう)」。

ここではプラーナのことを「気」と表現します。
意識が先に動き、それにプラーナがついていく。

プラーナを意識しつつ呼吸するわけですが、
あくまでも「私がプラーナを動かす」という
主体的意識において行なわれている状態です。


******





9.第四段階は気主意従

第四段階は「気主意従(きしゅいじゅう)」。

多くの人にとってここから先はかなり難しいと
思いますが参考までに。

プラーナが呼吸をリードし、意識がそれを追い
かけます。プラーナの流れという実感が先に動
いて、それを意識で追うというSOシフトです。

相当たしかにプラーナを感じていないと、気主
意従はただの空想になってしまいます。ていね
いにプラーナの感触を確認する地道な練習が必
要でしょう。


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10.第五段階は気主気従

そして第五段階は「気主気従(きしゅきじゅう)」
です。意識と身体の区別があいまいになり、すべ
てが境体の運動として存在する状態です。

境体が境体が閉じたり開いたりして呼吸となり、
出入りするプラーナもまた境体です。つまり何層
もの濃度の異なる境体構造体が自分であり世界で
あると感じます。

このときのプラーナは気体や液体というより「光」
に近いものと感じられるかもしれません。


******





11.実践的には第二段階までで十分

気功なら「気」、ヨーガなら「プラーナ」はたい
へん重要な概念でしょう。

しかし特に「気」や「プラーナ」を意識しないで
練習しても効果の出るトレーニング体系を作り出
すことは可能だと考えています。

実践的には、第一段階の「意主体従」と第二段階
の「体主意従」までで十分だと言えます。

【参考文献】
ねこ気功〜恋するインナーマッスル〜


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12.キーポイントはSOシフト

プラーナを特に対象化しなくても、さきにふれた
SOシフト」をしっかり練習すれば、内容の濃
いトレーニングになると考えています。


※SOシフト
SOシフトとは、S(subject=主体)とO(object
=客体)が入れ代わる(シフトする)現象。たとえ
ば背骨を左右に動かす動作をするとき「私が背骨を
動かす」と感じる状態から「背骨が私を動かす」と
感じるような変化が生じる。この主客転倒をSOシ
フトと呼ぶ。呼吸のSOシフト、瞑想のSOシフト、
立禅のSOシフトなど、さまざまな場面で起こる。


******





13.ヨーギがなにかすればそれはヨーガになる

逆にSOシフトのない運動は、ただの「動き」であっ
て、ヨーガ(あるいは気功)になっていないという
表現ができるかもしれません。

「ヨーギがなにかすればそれはヨーガになる」とい
う言葉は、それを別の角度から述べたものだと考え
られます。


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14.見えるプラーナと見えないプラーナ

プラーナが見えるか見えないかという議論は慎重に
すべきだと考えます。

本考察においてはプラーナを

  境体(=情報としての身体)

のバリエーションであると考えています。そして、
境体が固体に近い態をとるときと、流体に近い態を
とるときがあると想定しました。

プラーナが固体に近い態であればあるほど、それは
見えやすいと考えられます。逆に流体化すればする
ほど見えにくいことでしょう。

つまり、プラーナは見える場合もあるし、見えない
場合もあると考えられるのです。


******





15.なにをプラーナと呼んでいるか

「私はプラーナが見える」という人がいるとき、以
下のようなことがいえそうです。

1.その人は自分がいま見ているものがプラーナであ
 ると認識している。

2.そしてその人は、ほかの人にはそれが見えないよ
 うだと推定している。

3.さらにその人は、自分がいま見ているもの以外は
 プラーナだと認識していない。

プラーナが見えるか見えないかの議論をする前に、
その人がなにをプラーナと呼んでいるかを明確にす
る必要があるのですね。


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16.プラーナが根本構成要素なら

プラーナを万物の「根本構成要素」と定義するヨー
ギもおられるようです。

そうだとすれば、存在するものはすべてプラーナか
らできていることになる。あらゆる物質はプラーナ
からできており、固体に近い状態、液体に近い状態、
気体に近い状態など、さまざまな「態」を取り得る
わけです。

つまりこの定義に従うなら、プラーナは見える場合
もあるし見えない場合もあるという説明が合理性を
得るわけです。


******





17.境体を想定することで

いずれにしても、先に述べたように境体(きょうた
い)というグレーゾーンを想定することで、プラー
ナはより身近なものとしてコントロールしやすくな
ると思います。


※境体
心と身体の境界に存在する情報としての身体のこと。
身体に芯を通すというときの「芯」は境体の一例。
それは肉体ではなく、肉体と重なるように存在する
情報としての身体である。


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18.私もまたプラーナ

プラーナが万物の根本構成要素だとすると、
「プラーナとは何か」と考えている私もまた
プラーナでできていることになります。私を
とりまく空間もプラーナです。

濃いプラーナと薄いプラーナがあり、濃いも
のが物質、薄いものが精神、その中間にある
のが境体(きょうたい)と考えるなら、いろ
んな仮説が描けそうです。


******





19.水と氷にたとえると

たとえば「氷水(こおりみず)」を想像しま
す。氷が濃いプラーナ、水が薄いプラーナだ
と仮定すると、プラーナの「態」の違いが理
解しやすいでしょう。

氷と水の触れ合っているあたりでは、

 水→氷
 氷→水

という転換がめまぐるしく行なわれる場合が
あるはずです。


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20.呼吸はプラーナ交換

呼吸法(プラーナーヤーマ)はプラーナを
コントロールする技法。それはちょうど、
濃いプラーナである身体が、薄いプラーナ
を出し入れするようなもの。

そこではガス交換、エネルギー交換のほか
に、プラーナそのものの交換が行なわれて
いると考えてよいでしょう。


******





21.循環するプラーナ

肉体もプラーナ、精神もプラーナ、
その中間の境体もプラーナ。

ただ「態」というか濃度というか、
そういうものが異なるだけ。

 肉体←→境体
 境体←→精神

のそれぞれでプラーナ交換が起こり、
つねに循環しているイメージです。

その循環を促進するのが呼吸法、
つまりプラーナーヤーマであるという
のが、ひとつの考え方です。


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22.重力境体を実感する

呼吸法(プラーナーヤーマ)は、境体として
のプラーナを積極的に感じるための練習法で
すが、境体はほかの方法でも感じることがで
きます。

たとえば立禅。立つ練習です。重力を敏感に
感じながら、そのラインにそって「重力境体」
を作り上げていくワークでは、肉体と精神の
中間領域にあるプラーナを実感することがで
きます。

******





23.軸上のポイント

重力境体はいわゆる「軸」だと考えてよいで
しょう。

身体を上下に貫く軸上に、いくつかのポイン
トを想定していきます。これらのポイントも
また境体です。

標準的なポイントはたとえばこんな感じです。

1.頭頂部
2.耳くらいの高さ
3.鎖骨くらいの高さ
4.心臓くらいの高さ
5.へそくらいの高さ
6.仙骨くらいの高さ
7.会陰部
8.膝くらいの高さ
9.くるぶしくらいの高さ
10.足裏

さらに

11.天空の中心
12.地球の中心

などにポイントを想定する場合もあります。
これらのポイントがヨーガでいう「チャクラ」
と似ていることに気づかれる方もあるでしょ
う。


【参考】
十二の節(せつ)


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24.リラックスは境体への入口

ここまで見てきたように、境体は肉体と精神
の中間領域にある「意識としての身体」と定
義しています。

したがって境体を感じるためには、肉体も精
神もゆるめて、薄い状態にすることが前提と
なります。

ヨーガや気功において「リラックス」が重視
されるのは、境体へのアプローチをスムーズ
にするためだと考えられます。


【参考】
チャイルドタイム

******





25.練習体系における呼吸法の位置づけ

ヨーガでも気功でも「調身」「調心」「調
息」を重視しますが、では本当にどこまで
これらが実践されているかについては検証
が必要かもしれません。

プラーナとしての身体、プラーナとしての
意識、そしてプラーナとしての呼吸を観察
するエクササイズが、トレーニング体系の
中にどのように位置づけられているかを問
うわけです。

この検証過程において、ひとつの練習体系
およびその指導者がプラーナーヤーマ(呼
吸法)をどの程度の深さで認識しているか
がわかってくるわけです。


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26.やはり鍵を握るのはSOシフト

くり返しになりますが、主客が転倒する状態、
いわゆる「SOシフト」状態は大変重要だと
考えています。

気功でいう「入静」やヨーガの「サマーディ」
を体験するためには、現代人はSOシフトと
いう入口からアプローチするのがわかりやすい
のではないかと考えています。


※SOシフト
SOシフトとは、S(subject=主体)とO(object
=客体)が入れ代わる(シフトする)現象。たとえ
ば背骨を左右に動かす動作をするとき「私が背骨を
動かす」と感じる状態から「背骨が私を動かす」と
感じるような変化が生じる。この主客転倒をSOシ
フトと呼ぶ。呼吸のSOシフト、瞑想のSOシフト、
立禅のSOシフトなど、さまざまな場面で起こる。


******





27.月をさす指

アーサナや型にとらわれてしまうと、それは「月を
さす指」になってしまうので要注意。大切なのは
「月」を見ることであって、「指」はただの手段の
はずだからですね。

ですから「ただ立つだけ」とか「ただ呼吸するだけ」
という状態をどんどん深めていくことで、内容の濃
いヨーガが実践できるはず。「なにを」するかより
「どう」するか。


【参考:月をさす指】
「指が月をさすとき、愚者は指を見る」という言葉
がある。月を仏法に、指を教理にたとえて、文字や
言葉のはしばしにとらわれて本質を理解しようとし
ない意味に使われる。指は月ではないのだ。人間は
しばしば指にとらわれて月を見ない。


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28.上級になるほど見た目の動きが減る

トレーニングを重ねていくと、「なにを」するかよ
りも「どう」するかのほうが重要な場面が増えてき
ます。

方法自体はどんどんシンプルになっていき、意識の
使い方が高度になるからです。

ですから座禅や立禅のように動きのない練習は、じ
つは上級者向けなのだとも言えるわけです。

******





29.意識としての腹圧

たとえば「腹圧」をかける。

最初のうちは実際に物理的な圧をかけます。けれど
もその感覚がわかってきたら、徐々に物理的な圧を
減らし、意識的な圧を増していきます。

腹部の意識を「濃く」すると言ってもいいでしょう。
これが「境体」をつかむヒントになります。


※境体
心と身体の境界に存在する情報としての身体のこと。
身体に芯を通すというときの「芯」は境体の一例。
それは肉体ではなく、肉体と重なるように存在する
情報としての身体である。


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30.境体としてのプラーナが出入りする

プラーナーヤーマ(呼吸法)も同様です。

実際の空気の出入りのほかに、境体としてのプラー
ナも出入りしてると想定し、空気よりもプラーナの
出入りに注目することで内容の深い呼吸法となりま
す。


******





31.極端に浅い呼吸で試してみる

たとえば実体としての空気がほとんど出入りしない
ような浅い呼吸をしてみます。

ほんのかすかな息であるにもかかわらず、境体とし
てのプラーナが出たり入ったりするのを感じること
があります。

そんなときは息を止めているのと変わらない状態で
あるのにまったく苦しくない。むしろ透明な快感に
満たされるのに気づきます。


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32.プラーナはエネルギー+情報か

少し視点を変えてみましょう。

プラーナとは何かという問いに対しては
いろんな回答があると考えられます。

そのひとつに、プラーナとは

 「エネルギー+情報」である

というものがあります。情報を乗せたエネルギー、
それがプラーナだというわけです。

******





33.メディアとコンテンツ

書物は紙にインクで色を付けた文字や絵という形
で情報を伝えます。


 紙に染みたインク+情報


が印刷物における表現です。

このとき、表現の本質は「紙」でも「インク」で
もなく、情報のほうであることは言うまでもあり
ません。

紙やインクはいわばメディアであり、情報のほう
が コンテンツとなります。


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34.プラーナの本質は情報

もしもプラーナが


 エネルギー+情報


であるとするなら、エネルギーはメディアであり、
情報がコンテンツとなるでしょう。

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35.プラーナーヤーマは情報制御の技法

だとすれば、プラーナの本質は「情報」である
と言えそうです。

プラーナーヤーマとは、呼吸法を通じてある種
の「情報」を出し入れしたり、体内をめぐらせ
たり、あるいは天地に流通させたりする技法で
あると定義できるかもしれません。


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36.本質へ働きかけるために

DNAはデオキシリボース(五炭糖)とリン酸、
塩基から構成される物質です。

しかし物質に意味があるのではなくて、そこ
に書き込まれた遺伝情報が本質。物質は情報
を載せる媒体(メディア)にすぎないという
わけです。

プラーナの本質が情報であるとするならば、
それに対してどのようなアプローチをするか。
プラーナーヤーマの練習にはこの視点が欠か
せないと思われます。

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37.非言語コミュニケーション

たとえば言語は、音声や文字を使って「意味」
を伝達します。その「意味」が情報の本質と
なります。

しかし人間は言語とは異なるコミュニケーショ
ンも行なうことができます。非言語情報がダ
イレクト伝わることは、日常生活のいろんな
場面で観察されます。


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投稿者 kurosaka : 2009年5月 1日