呼吸法にできること
【インデクス】
1.まずは長く吐く
2.つぎに腹圧をかける
3.そして背骨を動かす
4.さらに肩をほぐす
5.さあヒトゴ
書籍「呼吸を変えれば音楽は変わる」
難しい理屈はいりません。まずはゆっくり、長く吐
く。それだけで心身は落ち着きを取り戻します。
じゅうぶんに息を吐ききったら静かに吸います。自
然に空気が入ってくるはずです。吐くときは口から、
吸うときは鼻からがいいでしょう。
呼吸の長さを短いものから徐々に長くして、また短
いサイクルへ戻す呼吸法が12321(ワンツースリー
ツーワンです。正式にはいろいろ手順がありますけ
れども、すぐに使える簡易版を紹介します。
1.のんびり。けっして力まないこと。
2.鼻から吸って口から吐きます。呼吸のときなるべ
く音を立てないように。
3.リードメッセージの音声にあわせて以下のように
呼吸します。
●一小節吸って一小節吐きます。
●つづいて二小節吸って二小節吐きます。
●さらに三小節吸って三小節吐きます。
●以下、二小節の吸い吐き、一小節の吸い吐き
をやってから呼吸を整えます。
4.吸うときは肺のすみずみにまでしみわたるよう
に、吐くときは肺のすみずみからしぼり出すよう
に、ていねいに呼吸します。
5.吸い続ける間および吐き続ける間は、空気の流量
および息の速度が一定になるよう心がけます。
12321(ワンツースリーツーワン)のサイクルに
慣れてきたら、腹圧をコントロールしてみましょ
う。いわゆる腹式呼吸です。
腹式呼吸とは「胃や腸に空気を入れる呼吸」ではな
く、「適切な腹圧をコントロールする呼吸」のこと
です。専門的にはいろんな方法がありますけれど
も、ここではボトミングを取り上げましょう。
底節(ていせつ)の上げ下げをボトミングといいま
す。底節とは会陰(えいん)のことで、肛門と生殖
器の間の部分です。わかりにくかったら、ひとまず
肛門で代用しても構いません。
ボトミングは呼吸と合わせて行ないます。息は鼻か
ら吸い、口から吐きます。なるべく音を立てないよ
うに。底節(あるいは肛門)をしめ上げることをボ
トムアップ、ゆるめ降ろすことをボトムダウンとい
います。
ボトミングには四種類ありますが、ここではリラッ
クス効果の高い「すいあげはきさげ」をやりましょ
う。息を吸いながら底節をしめ上げ、吐きながらゆ
るめ降ろすのが「すいあげはきさげ」です。
※後述するリードメッセージでは逆の「すいさげはきあ
げ」が収録されています。
これを12321のサイクルに合わせて行ないます。特
に腹を意識しなくても、ボトミングに合わせて呼吸
することで、自然と腹圧がコントロールされます。
なぜそんなに腹が大切なのか
人間の腹部はもともと血行が悪いので、腹圧をかけ
ることで内臓がマッサージされ血が流れ始めます。
それで全身の血行促進につながるのを感じます。
また腹圧を変化させることによって、腸を中心とし
た消化器官が活性化して、消化吸収を助けると考え
られます。ストレスの多い生活をしているときに腹
式呼吸が有効なのは、内臓へのフィジカルなアプ
ローチという側面が強くあります。
さらに腹腔を取り巻く筋肉群のバランスを調整する
ことで体幹部の構造を安定させ、肺呼吸そのものを
深くする効果があります。これについてのくわしい
説明は、『呼吸を変えれば音楽は変わる』に整理し
てありますので、機会があれば参照ください。
12321で呼吸の長さや深さを操作し、ボトミングで
腹圧をかけると、身体も心も落ち着いてくるのを感
じることでしょう。
ここで呼吸筋群をほぐすために背骨をゆったりと左
右に動かしましょう。フィッシュスイムです。まず
大切なのは、のんびりすること。全身がたら~りと
「垂れた感じ」になっているのを感じてください。
その「垂れ感」をキープしつつ、背骨を左右にゆ
ら~り、ゆらりとゆらしてみましょう。
「背骨」といっても最初はわかりにくいでしょうか
ら、全身を左右に振るだけでも結構です。ただし急
がないでください。のんびりと。けっして力まない
でください。重要なのは動きよりも「ゆるみ」のほ
うなのです。
ゆっくりと、いたわるように、ゆら~り、ゆらり背
骨を左右にゆらす。このとき自分の背骨をよく感じ
てみてください。それは「一本の棒」ですか? そ
れとも「いくつも節のあるもの」のように感じられ
ますか?
言うまでもなく、背骨はいくつもの小さな骨の集合
体です。左右にゆらせば「棒のように」ではなく、
「鎖のように」動きます。もちろん、まだこういう
動きに慣れていないので、最初からうまくはいかな
いでしょうけれども。
練習を重ねるにつれて、背骨はだんだんしなやかに
動き始めます。棒からチェーンに、やがてはムチが
しなるようになります。
魚類が泳ぐとき、背骨を左右に振りながら前進しま
すね。この魚の泳ぎをまねて、背骨を左右にゆらす
のがフィッシュスイムです。
フィッシュスイムは、身体の中心である体幹部全体
を内側から動かす運動のため、多くの効果が期待で
きます。背骨に付着している呼吸筋群の活性化、背
骨の中にある自律神経への刺激、消化器官のマッ
サージ効果などなど。
特別な呼吸法をやらなくても、なんとなくフィッ
シュスイムをくり返すだけでも、呼吸は少しずつ深
く安定したものになるのを感じてください。
多くの人が自覚しないながらも「力み」を持ってい
る首から肩の筋肉をほぐし「外垂(身体の外側が垂
れる感覚)」の基本をつくる練習を加えます。
の~んびりしたチャイルドタイムを味わいながら、
肩の上げ下げをやります。これをショルダリングと
いいます。
両肩を真上へ思いっきり持ち上げます。この状態が
「筋力オン」です。これを数秒キープして「筋力オ
フ」にします。すると両腕の重みで肩がボトッと落
ちます。
「降ろす」のではなく「落ちる」感じです。このと
き、口で「ボト~ッ」と言ってください。無声音で
構いません。これも呼吸法の一種ですから、かなら
ず口に出してください。「ボト~ッ」です。
12321、ボトミング、フィッシュスイムにショルダ
リングを加えることで、身体の状態を整えます。そ
してこれら一連のワークを5分間で順番にやってい
くのが「ヒトゴ」です。
ここまで4つのワークをご紹介しました。
1.まずは長く吐く → 12321
2.つぎに腹圧をかける → ボトミング
3.そして背骨を動かす → フィッシュスイム
4.さらに肩をほぐす → ショルダリング
これらをひとつの流れとして5分間にまとめたのが
ヒトゴ(ひとりの五分間)です。の〜んびりした
チャイルドタイムの状態で行ないます。
※ヒトゴMP3音源
❑iTunes 呼吸を変えれば音楽は変わる
mp3には以下のメッセージを収録してあります。
では、ひとりの五分間、ヒトゴを始めます。
まず、の~んびりした気分、
チャイルドタイムになってください。
の~んびりしながら、ショルダリングを
やりましょう。
はいオン、肩を上げて~
オフ ぼと~
オン 肩を上げて~
オフ ぼと~
オン 肩を上げて~
オフ ぼと~
オン 肩を上げて~
オフ ぼと~
それではチャイルドタイムで
フィッシュスイムをやりましょう。
首の骨、頸椎が左右にゆらゆら~と揺れます。
頸椎が左右にゆらゆら~と揺れます。
つづいて胸部の背骨、胸椎がゆら~りゆらり。
胸椎がゆら~りゆらり。
さらに腰の背骨、腰椎から仙骨が
ゆらゆら~と揺れます。
腰椎から仙骨がゆらゆら~と揺れます。
はい、とまってください。
1-2-3-2-1 をやります。
鼻から吸って口から吐きます。
ボトミングは、すいさげはきあげです。
息を吸うときボトムダウン、
吐くときボトムアップです。
1小節吸って、1小節吐いて。
2小節吸って、2小節吐いて。
3小節吸って、3小節吐いて。
2小節吸って、2小節吐いて。
1小節吸って、1小節吐いて。
はい、楽にフィッシュスイムをやりましょう。
頸椎、胸椎、腰椎、仙骨がゆらゆらと揺れます。
はい、これでひとりの五分間、
ヒトゴを終わります。
このワークに上達してくると、わずか5分間で心身
の状態が大きく変わるのに気づきます。
※筆者録音による日本語版の練習用リードメッセージ
iTunes 呼吸を変えれば音楽は変わる