ワールド・プロジェクト・ジャパン  〜 合奏音楽のための国際教育プロダクション 〜


Jazz Arts Ensemble of Tokyo(八王子いちょうホール)

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ノナカジャムでお世話になっている音響エンジニアの小林篤茂さんにお誘いいただき、Jazz Arts Ensemble of Tokyo(JAET)のコンサートを鑑賞。会場は八王子いちょうホール。

JAETは日本にジャズ文化を広める活動をする団体で、今回はビッグバンド形式での演奏会を企画した。

プログラムが凝っていて、第一部はビッグバンド史における重要な曲を新旧取り混ぜて選び、第二部は若手アーティストたちによるオリジナル楽曲で構成されている。

第一部
Nutville (Horace Silver)
Don't Even Ask (Jim McNeely)
Take The A Train (Billy Strayhorn)
Wrappin' It Up (Fletcher Henderson)
To You (Thad Jones)
Hang Gliding (Maria Schneider)

第二部
No Bittersweetness (片山士駿)初演
EXTRA THINKING(笹栗良太)初演
Hmmmm(鈴木瑶子)日本初演
Black Turns to Amber (片山士駿)初演
Beyond the Bridge(RINA)初演

初演の曲をこれだけまとまって聞けるチャンスはあまりないので、じつに新鮮な気分になれた。音作りもPAの存在を感じさせないナチュラルなもので心地よかった。プレイヤーたちの演奏技術を際立たせるための音響と表現すればいいか。

私自身この30年ほど「モントレー・ジャズ・フェスティバル・イン能登」「Magic Jazz Town / IKSPIARI 2002」「インターネット放送JJazz.Net」「ステラジャム」「Tokyo Phat Camp」「ノナカジャム」などの制作を通じてジャズ文化普及活動に携わってきた。

今また若い世代のアーティストと制作チームが、JAETのような活動を旗揚げしたことはたいへん喜ばしく、心からエールを送りたい。

ひとつ昔話の披露をお許しいただきたい。1980年代後半のある日、有楽町マリオンのカフェで打ち合わせをしているとき、隣のテーブルに取材中と思しき2人がおられた。ひとりは雑誌記者のようで、もうひとりは料理評論家の山本益博氏だった。

山本氏の声が大きかったのとテーブルの距離が近かったので、話ははっきり聞こえた。その内容が興味深く、のちに私がジャズイベントをプランニングするときのヒントにさせていただいている。山本氏の論旨はこうだった。

1.日本のフランス料理のレベルはかなり高くなっている。
2.フランス料理店の内装もどんどん良くなっている。
3.接客については改善の余地は多いが健闘していると言える。
4.一番課題があるのはお客さんだろう。

つまりフランス料理を提供する側はいいところまで来ているが、それを食べる側への啓蒙が足りないという話だった。フランス料理の楽しみ方をもっと伝えるべきだと。

これは音楽についても同じことが言えるのではないか。ジャズ文化普及事業に携わってきてつねに感じているのは、「作り手」と「受け手」の接点作りに多くの知恵とくふうが求められることだ。

いい音楽を提供すればわかってくれるはずという期待は、あまりにも淡く儚い。音楽ビジネスのハード面のみならずソフト面にも着目して、新しい仕組みを創造し、改善し続ける。「変化と多様性」に寄り添うイベント制作が必要だろう。それはジャズという音楽が歩んできた歴史とも重なるように思う。

いずれにしても、さまざまのこと考えさせてくれる刺激的なコンサートだった。生のビッグバンドを聞くのはほぼ2年ぶりだったし。

小林さん、ありがとうございました。ノナカジャムも引き続きよろしくお願いいたします。

***(演奏会情報)***
ビッグバンドコンサートVol.1
日時:2021年10月8日(金)19:00開演
場所:八王子市芸術文化会館いちょうホール
出演:Jazz Arts Ensemble of Tokyo
https://jazzartsensembleoftokyo.org/

投稿者 kurosaka : 2021年10月 9日