心臓都市〜律動し吐息する路地裏〜
心臓都市
~律動し吐息する路地裏~
著:中近礼
まるで「読むモーツァルト」である。このエッセイ集は、魅力的な矛盾に満ちている。対極的なものが平気で同居しているのだ。
みずみずしさと気だるさ、奔放さと緻密さ、官能と品位、無邪気さと達観、ローカルとグローバル、饒舌と静謐. . .。世界各地の歴史を俯瞰する知性と、小さな日常の断片をからめとる細やかな感性。
聖俗の境界を越えた路地裏の文明論が、読む者を異質な時空へと誘い出す。
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【著者について】
広島に生まれ、京都に暮らし、世界中の都市を歩き、膨大な量の旅行記や文明論を書いてきた。しかし1970年代、20代の頃に2冊の本を出版した以外、原稿のほとんどは発表されていない。
著者の視点はいつも日常を離脱しており、60代となった今、自身の人生をアジール(聖域・避難所)であるとする。たとえばパリ北駅に近いフォーブル・サンドニ通り、マウイ島の東海岸パイア、バリ島、タイ、ベトナムなどに「浄土」を見出す。
簡単にアプローチできる異次元世界として宮島にもよく足を運ぶ。登山で山の上に居たのも、ヨットで海上に居たのも、世界各地の空港ターミナルに居るときも、そこに浄土を求める。
日常も著者には浄土でなければならなかった。ビジネスにも無意識に浄土を求め、絵画は見るリゾート、音楽は聞くリゾート、料理は食べるリゾートである。
もしレストランに行くならそこは絶対空間でなければならず、世俗を超越していなければならず、なにより心身にあるいは精神以上に身体に沿うものでなければならない。
車は乗る浄土で、オートバイや自転車も船もそうである。ふだん住む住居さえ著者には浄土である。人間関係も浄土で、リゾートで、アジールであってほしいと思い続ける。
投稿者 kurosaka : 2014年12月22日