【追悼】呼吸法の師へ
ファーガソン師へ。
あなたと初めて日本ツアーをしたのは、1991年の夏でした。
翌1992年には、オーストラリア・ツアーでもご一緒しましたね。
ブリスベンのミュージック・キャンプで、地元の高校生バンドを対象としたクリニックが開かれ、あなたは「ヨーガの完全呼吸法」を教えておられました。
これをきっかけに呼吸法に関心を持った私は、同1992年10月、東京渋谷にある西野流呼吸法へ入門。5年間にわたって道場へ通いました。
1994年の夏、ふたたびあなたのバンドと日本ツアーをする機会に恵まれました。
北海道の江差という海辺の町で、公演前の夕食を一緒にとったときのこと。テーブルの斜め前に座ったあなたは、私の目を見ながら、こうおっしゃいましたね。
「地球上の95%の人は正しい呼吸をしていない」
呼吸法を学んで2年近くたっていた私には、その言葉は強い印象を残しました。もっと深く、本格的に呼吸法を学ぼうと思ったのです。
西野流と並行してヨーガの呼吸法や、運動科学研究所の総合呼吸法を学び、気功法、瞑想法などの呼吸も研究しました。
やがて神武会という勉強会が生まれ、音楽家のための呼吸法「ウォーター&ブレス」をまとめることになりました。
2006年上半期には、その研究成果と杉山正先生のカリキュラムをあわせて「タングマジック」という講座をスタートさせ、好評を得ました。今秋以降、東京、福岡、大阪でも開催します。
同時に、ピアニストやヴァイオリニスト向けに「ウォーター&ブレスで弾く」という研究も開始したばかりです。
すべては、ファーガソン師、あなたが与えてくれたきっかけです。
エリック・ミヤシロさんからあなたの訃報を聞いた夜、不思議なことがありました。
事務所の玄関の蛍光灯が切れていて、まったくつかない状態でした。早く蛍光灯を取り替えなくちゃと思いつつ、数日が過ぎていました。
エリックさんからの電話を切って、出かけるために事務所を出るとき、私もぼんやりしていたのでしょう、つかないはずの灯りのスイッチを入れてしまいました。
すると、どうでしょう。
ここ数日間、一度もつかなかった蛍光灯がパッとついたのです。
この蛍光灯は、もともと「つき」が遅く、スイッチを入れてしばらくは薄暗く灯り、数分してから明るくなるものでした。しかし、この夜は、瞬時に明るくなったのです。
え? そういえば、この蛍光灯はつかないはず...。
そのとき、ふと、あなたがお別れのメッセージを届けてくださったように錯覚しました。
註)この蛍光灯はその夜だけ灯り、それっきり消えたままです。
来月、日本で、あなたと四度目のツアーをする予定でした。東京で、菅平で、愛知で、高知で、倉敷でたくさんの方々が、この企画を支えてくださっていました。残念ながら、そのツアーは実現しませんでした。
しかし、私はこんなことを考えています。
ヨーガでは呼吸法のことをプラーナーヤーマといいますね。呼吸は「プラーナ」を出し入れするものという考え方です。そして、この世の森羅万象はプラーナからできあがっている。
プラーナーヤーマの達人だったあなたは、宇宙のプラーナへと還って行かれたのだと。
「地球上の95%の人は正しい呼吸をしていない」
あなたが与えてくれた呼吸法の世界を私はさらに旅するつもりです。
そして、プラーナに戻られたあなたと、私たちはいつでも会うことができます。プラーナーヤーマを実践することで。
これからもよろしくお願いします。
投稿者 kurosaka : 2006年8月26日